Webサイト運営に携わっていると、以下のような課題がつきものです。
- 自社サイトのコンバージョン率(CVR)が頭打ちになっている
- ユーザーから「使いにくい」といった声が聞こえてくる。
上記の課題の原因は、もしかしたらUX(ユーザーエクスペリエンス)にあるかもしれません。
UXとは、ユーザーがWebサイトを通じて得る「体験」全体のことを指します。
UXを改善することは、ユーザー満足度を高め、最終的にビジネスの成果に直結する重要な要素です。
本記事では、WebサイトにおけるUXの重要性に加え、基礎知識から具体的な改善ポイントまでをわかりやすく解説します。
WebサイトにおけるUXの重要性

UXはWebサイトで成果を出すうえで避けては通れない重要な考え方です。
本章ではUXの基本的な定義や、よく似た言葉であるUIとの違いについて解説します。
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは
UXとはUser Experienceの略称であり、日本語で「ユーザー体験」と訳されます。
これは、ユーザーが特定の製品やサービスを利用する際に得られる、すべての体験や感情を指します。
Webサイトにおいて重要なことは、単に使いやすいことだけではありません。
ユーザーが情報を探しにサイトを訪れ、内容を理解し、問い合わせや購入などの目的を達成し、その後のフォローアップまで含めた一連の体験すべてがUXです。
良いUXとは、ユーザーがストレスなく、満足感や喜びを感じられる体験を提供することを意味します。
UI(ユーザーインターフェース)との違い
UXとしばしば混同される言葉にUIがあります。
UIはUser Interfaceの略称であり、ユーザーと製品・サービスの接点を意味します。
Webサイトの場合、ユーザーの目に触れて、実際に操作する部分すべてがUIです。
例えば、Webサイトのレイアウトや配色・文字のフォント・ボタンのデザインなどがUIにあたります。
UIは、あくまで良いUXを実現するための構成要素の一種に過ぎません。
いくら見た目が美しいUIでも、ユーザーが目的を達成しにくいのであれば、良いUXは発生しません。
UIにこだわったうえで、より良いUXを提供することが企業の課題です。
ビジネスにおけるUXの重要性
近年、ビジネスにおいてUXの重要性はますます高まりました。
その背景には、主に以下の3つの要因が挙げられます。
スマートフォンの普及
ユーザーはいつでもどこでも情報にアクセスできるようになり、企業とユーザーの接点が多様化しました。
そのため、デバイスを問わず一貫した質の高い体験を提供することが不可欠です。
ユーザーが利用するデバイスを想定してUXを設定しなければ、Webサイトの離脱率が上昇する恐れがあります。
情報・サービスの飽和
世の中には情報やサービスが溢れており、飽和状態にあります。
その結果、ユーザーは機能や価格だけで製品を選ぶことが少なくなりました。
そのため、Webサイトで提供されるUXが、他社との差別化を図るための重要な付加価値となっています。
ユーザーとの継続的な関係
昨今は、サブスクリプションモデルの普及などにより、一度きりの売上よりもユーザーと長期的な関係を築くこと(LTVの向上)が重視されています。
満足度の高い体験は、リピート利用やユーザーロイヤリティの向上に直結する要素です。
UXの向上はユーザーを増やすだけでなく、より長くWebサイトを利用してもらううえでも重要です。
表示速度が遅く、操作性が低い状態だと、ユーザーが不快感を覚え、離脱する可能性が高まります。
ユーザーと継続的な関係を維持するには、優れたUXを持った快適なWebサイトを提供することが必須です。
WebサイトのUXを改善するメリット

UXの改善は、単にユーザーのためだけではありません。
Webサイトを運営する企業にとっても、ビジネスの成長につながる多くのメリットをもたらすものです。
本章では、代表的な以下のメリットについて解説します。
- ユーザーの離脱率の低下
- ブランドイメージの向上
- 他社のWebサイトとの差別化
- コンバージョン率の改善
UXがもたらすメリットを理解すれば、改善する意義を理解しやすくなります。
ユーザーの離脱率の低下
UXの改善は、ユーザーの離脱率の低下を防ぐうえで有効な施策です。
ユーザーがWebサイトを利用する際、「ページが見つからない」「操作方法が不明」といった状況になるとストレスを感じやすくなります。
このような問題が発生すると、ユーザーは不満を感じ、すぐにWebサイトから離脱してしまう傾向があります。
UXを改善し、ユーザーが直感的に操作できるようなサイト設計を行うことで、離脱率の大幅な低減が可能です。
離脱率が下がれば、ユーザーはWebサイト内により長く滞在し、提供されている情報に深く触れる機会が増えます。
ブランドイメージの向上
快適なUXは、現代において企業がブランドイメージを向上させ、成功を収めるうえで不可欠な要素です。
ユーザーがWebサイトを訪れた際、「このサイトは見やすく、操作しやすい」「必要な情報にすぐにアクセスできる」と感じることは、企業への信頼感や好感度を向上させます。
その結果、顧客ロイヤリティが向上し、口コミによる自然な情報拡散が期待できます。
UXの改善は広告費を削減しながら、ブランド認知度を高める有効な戦略です。
他社のWebサイトとの差別化
UXは、現代の競争激化する市場において、製品やサービスが他社と差別化を図るうえで非常に重要な要素です。
心地よいデザイン・直感的な操作性・スムーズな情報アクセスなど、UXを重視した設計は、ユーザーに「また使いたい」と思わせる体験を提供するものです。
優れたUXは、単に製品の使いやすさを向上させるだけでなく、ブランドイメージの向上にもつながり、長期的な顧客関係を築くうえで不可欠な要素です。
ユーザー中心の視点を取り入れることで、持続的な競争優位性を確立することが重要です。
コンバージョン率の改善
Webサイトの最終目標は、コンバージョンの獲得、つまり購入や問い合わせといった成果につなげることです。
優れたUXは、コンバージョン率(CVR)を改善するうえで不可欠な要素です。
UXを改善することで、ユーザーがWebサイト内で迷ったり、ストレスを感じたりする要因を排除し、サービスの利用や製品の購入を促進できます。
さらに、製品やサービスに関する情報を的確に伝え、ユーザーの疑問や不安を解消することも重要です。
ユーザーが快適にWebサイトを利用できる環境を整えることで、コンバージョン率や顧客満足度の向上をするだけでなく、最終的なビジネス目標の達成に貢献します。
「悪いUX」の事例

良いUXについて理解を深めるためには、逆に「悪いUX」の事例を知ることも有効です。
本章では、Webサイトでよく見られるUXを損なう以下の例を紹介します。
- 専門用語が多く理解しにくい
- 導線が不明確で使いにくい
- 広告やポップアップで閲覧しにくい
- 画像が重く表示速度が遅い
自社サイトが当てはまっていないか、ぜひ確認してみてください。
専門用語が多く理解しにくい
製品やサービスについて詳しく説明しようとするあまり、業界の専門用語や社内用語を多用してしまうケースです。
作り手側にとっては当たり前の言葉でも、ユーザーには理解できず、ストレスの原因となります。
常にターゲットユーザーの知識レベルを意識し、誰にでも伝わる平易な言葉で説明することが重要です。
導線が不明確で使いにくい
Webサイトの構造が複雑で、「次に何をすればいいのか」「どこをクリックすれば目的の情報にたどり着けるのか」がわからない状態は、ユーザーにストレスを与えます。
例えば、グローバルナビゲーションの項目が多すぎたり、関連性のないページにリンクが張られていたりすると、ユーザーはサイト内で迷子になってしまいます。
ユーザーの行動を予測し、シンプルで一貫性のある導線を設計しましょう。
広告やポップアップで閲覧しにくい
広告収益や会員登録を促すことを優先するあまり、コンテンツの閲覧を妨げるような広告やポップアップを多用するケースです。
ユーザーが記事を読んでいる最中に突然画面全体を覆う広告が表示されたり、何度も閉じる必要があるポップアップが表示されたりすると、ユーザーは強い不快感を抱きます。
ビジネス目標とユーザー体験のバランスを慎重に考慮する必要があります。
画像が重く表示速度が遅い
デザイン性を重視して高画質の画像を多用した結果、ページの表示速度が極端に遅くなってしまうケースは珍しくありません。
ユーザーはわずか数秒の遅延でもストレスを感じ、ページが表示される前に離脱してしまいます。
画像のファイルサイズを適切に圧縮したり、最新の画像フォーマット(WebPなど)を利用したりするなど、表示速度を最適化する工夫が不可欠です。
また、デバイスが多様化している状況を踏まえ、モバイルユーザーへの配慮も必要です。
マルチデバイスに対応したWebサイトにすることで、すべてのユーザーに優れたUXを提供できます。画像最適化の不足は、CVR低下やSEO順位下落に直結するため早急な対策が必要です。
Webサイトを改善するUXハニカムとは

UXは抽象的な概念であり、「どこから手をつければ良いのかわからない」と感じる方も少なくありません。
UXを改善するうえで役立つのが、UXの評価軸を7つの要素に分解した「UXハニカム」と呼ばれる考え方です。
UXハニカムの構成要素は以下のとおりです。
- Useful:役に立つ
- Usable:使いやすい
- Findable:見つけやすい
- Credible:信頼できる
- Accessible:アクセスしやすい
- Desirable:好ましい
- Valuable:価値がある
自社のWebサイトが各要素を満たせているかチェックしてみましょう。
Useful:役に立つ
Webサイトが成功するためには、ユーザーにとって役に立つ情報や機能を提供することが不可欠です。
ユーザーが抱える課題を解決したり、目標達成をサポートしたりするコンテンツを用意することで、訪問者の獲得につながります。
重要なのは、コンテンツがターゲットユーザーのニーズに合致しているか、情報が正確かつ最新であるかどうかです。
魅力的なコンテンツは、ユーザーのエンゲージメントを高め、リピーターを増やすための鍵となります。
Usable:使いやすい
Webサイトの使いやすさは、優れたUXの根幹となる要素です。
ユーザーが求める情報やサービスに、ストレスなく、効率的にアクセスできることは不可欠です。
例えば、ナビゲーションメニューの配置や文言は直感的でわかりやすく、ボタンは視覚的にクリックしやすいデザインにしましょう。
また、フォーム入力は最小限の項目で済むように工夫し、エラーが発生した場合も、具体的な解決策を提示するなど、ユーザーを迷わせない・考えさせない設計が求められます。
操作における無駄を徹底的に排除し、ユーザーが目的をスムーズに達成できるようにすることが重要です。
最適化されたWebサイトは、ユーザー満足度を高め、コンバージョン率の向上につながります。
Findable:見つけやすい
ユーザーが求める情報が、Webサイトの「見つけやすい」場所にあることも大切です。
どれほど有益な情報があっても、ユーザーが容易に見つけられなければ価値は半減します。
そのため、Webサイトの情報アーキテクチャは、論理的かつ直感的に理解できる構造で設計しましょう。
明確なカテゴリ分け・一貫性のあるナビゲーション・ユーザーが求める情報に迅速にアクセスできる導線設計が不可欠です。
さらに、サイト内検索機能の充実・現在地の明示・関連コンテンツへの効果的なリンク設置などの施策は、サイトのユーザビリティを飛躍的に向上させます。
Credible:信頼できる
Webサイトからの離脱を防ぐには、信頼性向上が不可欠です。
そのためにも、運営者情報の明示・プライバシーポリシーの整備・SSL化は最低限の対策です。
さらに、専門家監修によるコンテンツ提供や、客観的なデータに基づいた情報発信は、ユーザーからの信頼を高めます。
これらの取り組みを通じて、Webサイトの信頼性を高め、ユーザーに安心して利用してもらえる環境を構築しましょう。
Accessible:アクセスしやすい
Webサイトは、年齢・身体的な制約・利用デバイスや環境に関わらず、誰にとってもアクセスしやすい仕様を目指しましょう。
視覚障がい者向けのスクリーンリーダー対応としての画像への代替テキスト設定・運動障がい者向けにはキーボードのみでの操作を可能にするなど、アクセシビリティを高める工夫が求められます。
高齢者や色覚特性を持つ人への配慮も重要です。
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)のような国際的なガイドラインは、ウェブアクセシビリティ実現のための具体的な指針を示しています。
アクセシビリティに配慮したWebサイトは、より多くの人に情報を提供し、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
Desirable:好ましい
UXにおいて、機能的な価値に加え、感情的な「好ましさ」は不可欠です。
美しいデザインはブランドイメージを体現し、心地よいアニメーションや独自のビジュアルは「楽しい」「好きだ」といった感情を喚起します。
デザインは単なる装飾ではなく、ユーザーの満足度を高め、ブランドへの愛着を育む重要な要素です。
情緒的な価値は、競合との差別化を図り、長期的なロイヤリティを構築するうえで、ますます重要性を増しています。
Valuable:価値がある
Webサイトが「価値がある」と評価されるのは、ここまで解説した6つの要素がすべて満たされた状態です。この価値は、ユーザーとビジネス双方にとって重要です。
ユーザーにとっては、課題解決や満足感といった価値を提供し、ビジネスにとっては、売上向上やブランド認知向上といった価値をもたらします。
優れたUXデザインは、ユーザー価値とビジネス価値を両立させ、最大化することを目指します。
WebサイトのUX改善を実現する具体的なポイント

UX改善は、闇雲にデザインを変更しても成功しません。
本章では、改善プロセスにおける以下のポイントを解説します。
- ターゲットを見直す
- ユーザー目線で設計する
- 改善を繰り返す
- 画像やコンテンツを最適化する
ターゲットを見直す
誰のためのWebサイトなのか、ターゲットユーザーを明確に定義することがUX改善の第一歩です。
ターゲットを定義するには、年齢・性別・職業といったデモグラフィック情報だけでは不足しています。
どのような課題やニーズを持っているのか、どのような状況でサイトを利用するのかを具体的に描いた「ペルソナ」を設定しましょう。
ターゲットが明確になることで、デザインやコンテンツの方向性が定まります。
ユーザー目線で設計する
設計やデザインを行う際は、常にユーザー視点を持つことが重要です。
そのためには、実際のユーザーにサイトを操作してもらう「ユーザビリティテスト」や、直接意見を聞く「ユーザーインタビュー」といった手法が有効です。
作り手の思い込みを排除し、客観的な事実に基づいて改善点を洗い出せます。
改善を繰り返す
UX改善は一度行ったら終わりではありません。
Webサイトを公開した後も、常に改善を繰り返す必要があります。
Google Analyticsなどのツールを使ってユーザーの行動データを分析し、仮説を立て、改善策を実施し、その効果を検証するサイクル(PDCA)を回し続けることが重要です。
ユーザーのニーズや市場は常に変化するため、継続的な改善がサイトの価値を維持・向上させます。
画像やコンテンツを最適化する
画像やコンテンツの最適化も、Webサイトを改善するうえで重要な施策です。
Webサイトの表示速度はUXに直接影響します。
特に画像はページの容量を大きくする主な要因となるため、ファイルサイズを圧縮したり、適切なサイズで表示したりする最適化が必須です。
さらにWebpやAVIFといった次世代フォーマットを導入すれば、コンテンツの負荷を軽減できます。
加えて、遅延ロードの実装やCDNの活用も、配信速度を高速化し、より快適なWebサイトを実現するうえで有効な施策です。
ImgixでWebサイトのUXを改善しよう

より優れたUXを実現するなら、画像最適化サービスのImgixの導入をご検討ください。
Imgixは画像を最適化し、高速配信を実現できるCDNです。
URLパラメータを通じて、画像のリサイズ・トリミング・フォーマット変換・ウォーターマーク追加などのさまざまな処理をスムーズに実行できます。
国内の多くの企業で導入されるなど、Imgixは非常に信頼性が高いサービスです。
適切に活用すれば、WebサイトのUXを改善し、より高いパフォーマンスを実現できます。
まとめ UXを改善してユーザーが利用しやすいWebサイトを目指そう

UXとは、単なる見た目の美しさや使いやすさだけではなく、ユーザーがサイトを通じて得る体験全体の質を問い、ビジネスの成果を左右する重要な考え方です。
優れたUXを実現するためには、まず自社のターゲットユーザーを深く理解し、彼らの視点に立ってサイトを設計・評価することが不可欠です。
そして、一度作って終わりにするのではなく、データに基づいて継続的に改善を繰り返していく姿勢が求められます。
まずは、この記事で紹介したUXハニカムや悪いUXの事例を参考に、自社のWebサイトを客観的に見直すことから始めてみてください。











